2016年06月24日

兎と猫



そう

そうだ

ガタガタのナイフがあてられる
やわらかい肌の
切っ先は行き場を失って
細い線が

わすれている
声もあげずに
わすれられている
声はあげたのに

そう

ゆれている布の
向こう側を
見ていた

開かれた道の先から
やって来るものはなにもない
香りがする
無機質と
緑色の
ようなものの
老婆


「実感」はさまざまだから
血を流せば
眠れる者もいる
迷信で
腹が膨れる人もいる

どちらも
体重に差はない
どちらも
質量に差は無い
地球の上で
ただ
重い

そう
せいぜい
まぶしくなんて
ない

糸を切れば
その先にあったものが
知れるかもしれないなんて
たわごと
つっこめば
気持ち良かったかもしれないなんて
たわごと
言って
老婆

全力疾走
スカートをたくし上げて

そう

醜いものを
知っている
臭いものを
知っている

この悲しみの及ばない
この怒りの及ばない
世界などない
世界などない

そうだ

老婆が
全力疾走
そこにある生命

通ぶったやつらのコメントに
批評家に
投げつけた老婆が
血を流し
嗤う

だから悲しいんだと
笑う
これがそのナイフだと

そうだ
それだ
老婆


posted by こはしいづみ at 15:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

一行詩


昔書いた一行詩を見つけた。


 鋼鉄と、羊毛で、ほんとうのパンツをつくる。

 すかすかさに目が眩む 放牧の女

 おろしたての鱗で皿がにかにかしてる。

 シギー、シギー、猫のおっぽが千切れるよ

 キリンの下半身のように、生きているのだと思っていた。


ほんとうのパンツのやつは、「錆と光」っていうタイトル。
2005年頃に書いてた。
これと、シギーと、キリンのやつが好き。

一行詩って、すごく難しいんだけど、すごく自由で
なんでもありで
でも一応、バックグラウンドや風景や物語があったりする。わたしの場合ね。
語感がでかいってのもあるけど・・・
全然書くことのなくなった今、一行詩はすごく「難しいもの」かもしれない。
でもちょっと、書いてみたいと思った。

posted by こはしいづみ at 14:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月07日

ありふれた低空飛行



耳をつんざく
銃声に似た
金切り声
鳥が
澄んだ青空を割いている
汚すのは
わたしたち
ねえ
だれか
耳の穴に
生温い感傷を
ぶちまけてみてよ
わたしが痛いのは
わたしのたいせつなものが
眉尻をさげて
しまうこと
ねえ
だれか
お前は弱いと
穴を塞ぎながら
しゃべってみてよ

塞げるものなら
塞げるものなら

空が
海に
追いつかないまま
鳥が
魚に
憧れを抱かないまま
世界は
濡れている
わたしはなぞる
輪郭をもたないものを
感覚が
おきているあいだじゅう

だれか
言えばいい
干渉するのは
お前をあいしてるからだって
お前がしんぱいだからだって
お前にみちをしめすためだって
お前をおもうからだって
言えばいい
いっしょう守るから
干渉させてくれって
お前の腕が傷ついたとき
私の腕も同じように傷つくから
干渉させてくれって
お前の眉間に皺がよるとき
私の眉間にも皺がより
お前の心が痛いとき
私の心も痛いから
私は干渉できると
言えばいい
言えるのなら
そうすればいい
真綿の鳥かごで
幾度も鳥は窒息した

追いつかない
スピードが
わたしを置き去りにする
わたしの弾丸は
わたしが両腕で
せいいっぱい抱きしめられるひとにしか
向けられない


せかいがそれを赦さないなら
わたしは
ねむらなくていい

うつくしい干渉があるのなら
わたしに見せてよ
弾丸をわけてあげる
わたしの弾丸に勝るものがあるのなら
頭にぶちこんでみて
おとなしく
見ててあげるから



posted by こはしいづみ at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月10日

かいそう



沈む
よるに
あさに
めを
こうこうとあけて
わたしがなぞることができるのは
ただのじんせい
そこにあなたがいるなら
こころに比類なき突起をつけて
わたしは
いきていけるだろう
電球が
じぃと音をたてて
いつかの思い出を
映写機のようにまわす

                    (「回想」より)


マヨヒガで
茶色いだだっぴろい動物を見た
エサは
じんせいでいいらしい
わたしは一人寝がさみしいので
手を伸ばすことにする

                    (「飼いそう」より)


間違って借りた「スタンド・バイ・ミー」が
ホットドックをまずくさせる
青春は
じんせいのなかで
そんなホットドックのように
気色悪いものかもしれない
太った少年がはしる
太っていない少年もはしる
橋の上を
レールの上を
ただそこに
はじめられる時間があるから

                    (「快走」より)


東野さんは
西野さんの給料を気にする
西野さんは
東野さんのセックスライフを気にする
東野さんと西野さんは
同じ間取りの社宅で
それがじんせいであるかのように
お互いの脳みそを比較する

                    (「階層」より)


画期的なパンツが発明された
画期的な色合い
画期的な素材
バイオレンスなキャッチコピー

「これで、あなたのじんせいも地獄谷!!」

わたしは一人寝がさみしいので
手を伸ばすことにする

                    (「買いそう」より)

おもいだす
わすれない
わたしは
あなたのじんせいだった
あなたのぎょうれつで
あなたのあわで
あなたのふきでものだった
わすれない
いつか
つれていってくれるでしょう
いつか
おわりがあるでしょう
そのときわたしたちは
水面に浮かぶ
パーマのとれかけた長い髪を
わかめのようだと
見上げていよう
しあわせなじんせいだったと
わらって
見上げていよう

                    (「海藻」より)





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

久しぶりにゴル参加。

一歩及ばず。これはちょっとくやしさが残る。

なにを書いても
ある一点のみに尽きる
それが
わたしは好きだ



posted by こはしいづみ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月04日

ライフ イズ



もう
いいよ
わたしにとって
いきることと
しなないことは
どうぎだった
もう
めを
ほどいていい
ぬいあわせた
たどたどしい
がたつきを
ぬれそぼった
あたらしいないぞうを
もう
ゆるしていい
わたしは
なにもゆるさずに
たれながして
いつかみる
海のあおをおもった
ながいかみを
波にゆらして
ゆっくりとそこにしずんでいく
その蒼をおもった

けれど
いきたい
かれと
ただ
ひふがかれるまで
つかれはてるまで
いきたいと
いまおもう


あさが
わたしのあたまをなぐるのをやめてから
120にちがたった
おめでとう
あたらしいあさ
わたしは
あたらしくはならないけれど
あなたを
むかえにいこうとおもう
ねえ
みつけてもらうために
いきていた
って
いうよ
みつけるために
いきていたって
わたし
あなたがすきだって
さいごまでいうよ

どうろに
ひとつずつわたしをぶちまけて
よこたわる
わたしのないぞうは
きっとへいわで
ぐちゃぐちゃによごれたどうろで
さきのとがったくつをみつける
きっと
わたしはとてもあんしんする

わたし
あなたといきるのが
たまらなくすきだって
いつでもいうよ

うみにいこう
うつくしいものをたくさんみよう
うつくしくないものもたくさんみよう

それはじんせいで
それはふたりでいきていくことだ

そう
おもうから

わたし
あなたがいてしあわせだって
さいごまで
いうよ





s
posted by こはしいづみ at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月17日

ほんとうのパンツ



電線を
素手で捕まえて
とんでみる
結婚指輪をはめたおとこの人が
下から呼んでいる
とぶんだよ
なにもない
から
そこは更地みたい
ときどきひるがえってみても
更地はあまりにも平らかで
もうなにも
産まれないように見える
彼はここまで来ないから
下でパンツを
眺めているよ
ずっと
首を長くして
触れないまま見てる
そうしていつか飽きて
行って
しまうの
わたしもいつか
見せることを
やめてしまう
更地に着地して
新しい
砂山をつくろう
ひっかかりがないまま行ってしまったから
いずれまた
砂山をこわしてとぶんだ
下ではだれかが
わたしのパンツを見ていたり
笑っていたり
するといい
鋼鉄と羊毛で
本当のパンツを
作った
いつか
キミが行ってしまっても
(わたしが行ってしまっても)
大好きだったことは
わすれない










posted by こはしいづみ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月13日

風の谷で青い服を着た少女が桶屋を営む。



父が死にました
弟の上の歯がとうとう残り3本になりました
ミケが旅に出ました
ジョシュアは町で女の子を産みました
がじゅまるの樹がざわめいています
みんな
風の噂で聞きました
どうしてそんなにまっ青なのかと聞かれれば
かなしみ

こたえます
どうしてこんな場所でと聞かれれば
穴ぼこがあいていたからとこたえます

風が吹いて
カラカラと桶を鳴らし
谷を抜けて
わたしの産毛を揺らすように
陽が落ちてゆきます
儲かったことなどいちどもなかったけれど
例えばグローブがあれば
わたしはボクシングをしていたし
例えばツリーハウスがあれば
わたしはトムソーヤになっていたし
それだけのことです
深い意味なんてありません
かなしみが
湖を涸らすまで
風の噂で
そういうことにしておいてください



posted by こはしいづみ at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月21日

しまわれているところ



木蓮の花が咲きましたので
もう春です
わたしはめくらなので
マザーグースをよんでいます
きみは不幸だから
どんな素敵なうたもうたえる

ときどき
ズボンの中に手を突っ込んで
パンツを直してみたくなることってなあい?
正しくないから
からだに
とても荷が勝ちすぎて
ああ
やっぱり
いやらしいのにすればよかったなぁとか
ジゼルみたいなのにすればよかったなぁとか
思うわけ
きみは幸せだから
素敵なうたが
うたえるね
原爆ドームが
ただの通り道みたいに彎曲しているよ
どこもかしこも通り道だ
短髪のおとこのこがすき
ごつごつした手のおとこのこがすき
としうえがすき
ロカビリーってなんだっけ
どんなキスをするのかなぁって
おもうよ
舌をいれたり
したいと思うよ
わたしはいやらしくて
ずるいから


わけもなく走り出したくなる
それが雨だと
さいこう
さいこう!!
時間が経つと
どんなものも
たいしたことがなくなる
悲しい
って
それは
愛していないからなのか
愛されていないからなのか
馬に乗って
低空飛行してるみたい
どんなゲロを吐いても
道路が汚れて
人の靴も汚れて
空が遠くなる


わたしのなかの
細かい皺が
ふやけているから
やさしくばかり
しないでほしいの


正しくないので
パンツがむずむずするんだ
きみが折り目をひっぱって
海岸や
あいしてるや
ことばや
抱いてほしいを
司書のように
しまいなおす
わたしはずるいから
服はきみが脱がす
パンツはすこしだけ
いごごちがいい





posted by こはしいづみ at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月07日

春の機械



水飴を舐めながら
父は船乗りでした
と言って
海を想い
下着をおろすと
とおい昔
あの庭には
干乾びたものなど何もなかったのだなと
それが嬉しくて
滑らかにわたしを汚していくものも
光が肌を透かしているので
少しだけ
微笑ましく
思えます


庭では
植えた憶えのないイチゴがなり
父は船乗りだったので
亡骸になってもなかなか戻らず
葬儀場は
酸いにおいがしていたのよと
言ってみても
魚を想い
下着をつけると
急速にわたしを汚したものも
どことなく似ているところがあって
少しだけ
哀れに思います


身体は
どうせなら機械のように
動けばよかったのだけれど
わたしの脳は日がな一日海に出掛けているので
すばらしくもない
皮膚や血流で
ざわついたかたまりを
吸ったり
吐いたりしながら
生きている



庭に埋めた船は
イチゴの花が咲く頃
チカチカと風をならして
飼っていた猫の亡骸も
風化しかけた犬小屋も
隆々と育った雑草も
やがてのみこみ
風を叩き
土を
節くれだらけにしていきます



錆びた血の味のような機械が
抱かれたり
風を
殴ったりしながら
生きている



願わくば
わたしのうつくしいかかとを
断片が
突き刺したりしませんように




posted by こはしいづみ at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月24日

はなればなれに



さかなをあげる
牙をもった
細長いさかな
ぬるぬると
(てらてらと)
光って
それはきれい
わたしは穴があいている
だから
お腹がすいている
行き場がなかったように
梯子は
まっすぐに生える
梯子を上る
その
中途
ひとびとは
絵を見るそうよ
それは大きな
それは小さな
汚い
きれい
人生のおわり
そんな絵を
見るそうよ
あなたは
さかなをぶらさげて
うれしそう
雨が
泡立っている
踵が
傷ついて
それでもあなたはうれしそう

曼珠沙華の
赤い群生を見たわ
毒を抱えて
葉と花は
同時に咲くことなく
お互いを
思って死ぬの
感傷で
節くれが出来るわね
わたしは
望んだ
穴があいている

つつましやかに
時は過ぎて
なんでもないように寝そべって
出し入れして
てらてらして
言葉を吐いて
吐いて
ジーパンを
はいても
きっと
穴はあいている

さかなの隙間に
新しい肉や
本棚や
ディスクや
猫毛を
詰めてみたけれど
大きすぎて
人生のおわりまで
きっと
お腹がすいている



posted by こはしいづみ at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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